あなたが果たしてくれたこと(娘より)
- AKI

- 2020年4月2日
- 読了時間: 5分
更新日:2020年8月26日
〜責任を持って役割を果たす人〜

昔から当然のように、結婚しても仕事は続けるものだと思っていた。 自分の人生にとって、仕事が一番大切で、 仕事が充実していて初めて、プライベートも充実すると思っていた。 それはきっと、 真面目に働き、女性として自立して生きる母の姿を見て、 育ってきたから。
男社会の中で、船舶のエンジンを力一杯組み立てたり 整備工場での事務職では、 トイレ掃除やお昼のお味噌汁作りを買って出たりして。 ある時は割烹屋の女将。またある時は和菓子屋の店長。 家族や子育てを優先して、 パート社員として働いていたにも関わらず、 雇用形態なんて関係なく、いつも責任のある立場を任されていた。
人として、当たり前のことをきちんとする。 言われたこと以上の仕事を、当たり前にする人。 きっと職場でも、そんな人だったんだろうと思う。
「家族を大事にする」 「人に思いやりを持って接する」 そんな当たり前だけど、 生きるうえで何よりも大事なことを、母はしっかりと教えてくれた。
特に 「人に迷惑をかけずに自分でなんとかする」 そんな感覚は、 自分の意思を持って、群れずに生きる母から 受け継いだことの一つだと思う。
小学校低学年の時。 鍵を忘れてしまって、家の中に入れなかった日のことを よく覚えている。 たった一人で数時間、寒空の下で親の帰りを待っていた。 近所の大人にも学校の先生にも頼らず、一人で。 後日、先生に「そういう時は相談してね」と言われるまで、 人に頼るという発想がなかったことに気づく。
真面目でしっかりもの。 いつの間にか私も、そんなふうに言われる女性になっていた。
そんな私が、結婚して子供が生まれて、 家族が優先の世界を生きている。 結婚に夢を見るようなタイプの女の子ではなかった。 でも、実際に結婚してみたら、 今は自分が”思うようにできている”感覚があって、 結婚が悪いものだとは、少しも思っていない。
結婚前に比べると、確かに働き方は変わった。 でも、やっぱりいつまでも 外の世界と接点を持って生きていたい。 ちゃんと世間の流れを肌で感じながら、 社会や経済がこれからどうなっていくのか、 ビジネスの感覚を鈍らせないで、 広い視野を持って生きていける自分でありたい。 柔軟に思考して、変わっていくことも大事。 人としての厚みがないと、仕事だってうまくいかないと思うから。
それが、私のありたい姿。
そんな想いを根底に据えて、 仕事と家庭を両立しようとしている私がいる。 そのバランスをとりながら ありたい自分で居られるのは、 私が少しでも楽に動きやすいようにと、 いつも母がサポートしてくれているからに他ならない。 感謝の気持ちが湧きあがる。
特に子供たちの面倒を見てくれていること。 学校から帰ってきた時、 出迎えてくれる家族がいる温かさを彼らは知っている。 いろんなところに連れて行ってくれること。 体験をさせてくれること。 今はそのありがたみが分からなくても、 いつか彼らの人生にとって 何かのきっかけにつながるかもしれない材料を、 たくさん散りばめてくれていること。 自分の目で耳で身体で感じる体験を たくさんさせてくれていること。 私にできないことを、してくれていると思う。
そして、母が私にしてくれたように 四季折々の日本の伝統も子供たちに教えてあげたいと思う。 お正月にはおせち、節分には豆まき、雛祭りにはお雛様を愛でて。 そんな何気ない家族の日常を大事にしていきたい。
私が病気で苦しんでいる時、 「代わってあげられるなら、代わってあげたい。」と 言ってくれた母の声が、今でも耳に残っている。
孫の具合が悪い時にも、 同じセリフを放つ母の姿に 未だ敵わない大きく偉大な母の愛情を思い知る。
バイタリティがあって、愛情深く情熱的な母。 サービス精神があって、近所付き合いもうまい。 喜寿を迎える今も、相変わらずしっかりものだ。 人に迷惑をかけないようにと、写真の整理まで始めた母には、 まだまだ元気でいてもらいたい。
人付き合いがうまい母だけど、 本当は、周りのことが気になって眠れなくなることがあるほど 繊細な面があることを、私は知っている。 外でうまくコミュニケーションをとっている分、 母にとって、私たち家族が最も気を許すことができて、 ストレートに感情を表現できる相手なのかもしれない。
母と娘だから、時に激しくぶつかり合うこともある。 毎日一緒にいるから、 お互いにうまく距離感を掴めなくなることもあるかもしれない。 だけど。 たった一人の私の母。 母が私にくれたものは、どんなに喧嘩をしても、消えることはない。 責任を持って、役割を果たす人。 そんな母からみれば、私はまだまだ料理の手順が悪かったり、 やるべきことが追いつかずだらしなく見えたり、 いつまで経っても、心配な娘なのかもしれない。
その一方で、 自立した一つの立派な家族として 経済的な心配をせず、 私たち夫婦を信頼してくれていることもまた、 感じることができている。
まだまだ子育てで助けてもらう毎日だけど、 母が厳しくもたっぷりの愛情を注いで私を育ててくれたおかげで、 私自身も母に似て、 自分の意思をしっかりと持った女性になることができた。 だから、母として、妻として、 悪戦苦闘する毎日だけど、 そっと見守って居てくれたら嬉しい。 助けてほしい時に、助けてと言える距離に居てくれるから。 愛情深い母だから、 手を差し伸べたくなることもあるだろうけれど、 戦友と呼べる、誰よりも信頼する夫とともに、 自分たちなりのやり方で、奮闘してみたい。
そのチャレンジと失敗の繰り返しを 人生の先輩として、一番近くで見守っていてほしい。 この先も変わらない家族の日常が続いていく。 喧嘩もするだろうけれど、 母が楽しいと思えることをなるべく叶えていきたい。 これまで充分に、私たちに注いでくれたエネルギーを、 これからは母自身が自分のために使ってくれたらいいなと思う。
母がやりたいように、幸せに生きて欲しい。 父と寄り添って、いつまでも。 変わらない毎日をこのまま一緒に。
お誕生日おめでとう。 私を産んでくれてありがとう。





コメント